はじめに
「どんなフードを選べばいいんでしょうか?」
 この問いは、私自身が何人かの獣医さんに投げかけたものであり、子猫のオーナーさんから度々質問されるものでもあります。今のところ確信しているのは、「全ての猫にピッタリの究極のキャットフードは存在しない」ということです。

 私自身もこれまでさまざまなフードを試してきました。ユーカヌバ、サイエンスダイエット、ロイヤルカナン、プロパック、ナチュラルバランス、エボルブ、ソリッドゴールド、アズミラ、カリフォルニアナチュラルetc……。でもどれが一番かなんて、ラベルを比較して、メーカーに電話してあれこれ質問したけどやっぱりわかりません。


 人間もそうですが、猫も1頭1頭、体質や食嗜好が異なりますし、運動量や脂肪代謝量が異なれば体重1キロあたりの必要エネルギー量も変わってきます。病気の子は必要な栄養素が変わってきたり、特定の成分が低めのフードにする必要も出てきます。


 病気ではないけど、血糖値が高め、コレステロールが高め、尿がアルカリ性になりやすい……といった子の場合、フード選びに気をつけてあげれば発病を防いだり遅らせたりできるかもしれません。サプリメント、ハーブ、ホメオパシー、漢方なども上手に使えば、病気の治療・予防や健康維持に役立つ場合があるでしょう。


 結局のところ、その猫に一番よいと思われる食事は、日々の健康状態チェックや定期的な獣医師による健康診断から、飼い主自身が考えて悩んで選んであげるしかないと思うのです。その検討や判断の材料として、いくつかの指針をあげさせていただきますので、参考になれば幸いです。ただし、これらは私の考えに過ぎず絶対ではありません。


 獣医さんや資料を参考に、手作り食の栄養の勉強もしつつ、よりよいフードは何かについてこれからも考えていきたいと思います。皆さんのかかりつけの獣医さんのご意見や、ペットフードに関するさまざまな著書を参考に、どうぞ今一度考えてみてくださいね。


 よいフードとは?


研究熱心なメーカーのフード
 獣医さんにフードについて質問したとき、必ずといっていいほど返ってくる答えです。独自の研究設備を持ち、長年ペットフードについて研究していて、その研究結果をなんらかの形で発表しているメーカーのフードであれば、安心だろう、ということです。そのようなメーカーはたいてい、獣医師向けの処方食や療法食を作っていて、ペットの栄養についてまとめた本や小冊子も作成しているようです。
 この考え方ですと、アイムス、ヒルズ、ウォルサムあたりのフードが該当するといえるでしょうか。





合成保存料等を添加していないフード
 最近よく言われていますね。合成保存料を使っていなければ、それは充分宣伝文句になりますから、そのことが必ず記載してあるはずです。もし、記載していなかった場合は、合成保存料を使っていると考えて間違いないでしょう。どんな保存料を使っているのかは、各メーカー(輸入代理店)に問い合わせてみるとよいでしょう。


 ただ、「脂肪分が酸化すると合成保存料以上に毒性が強くなることがある」という指摘があります。それなら、最初から合成保存料を使っているフードを選ぶのもひとつの選択肢だ、という考え方もあるようです。


 しかし、合成保存料の代わりによく用いられるハーブ「ローズマリー」は、合成保存料に匹敵するかそれ以上の抗酸化作用があるそうです(参考『ペットのためのハーブ大百科』)。それならば、合成保存料ではなく、ローズマリー抽出物を使って酸化防止をしているフードのほうが安全な気がします。ビタミンCやビタミンEも保存料として用いられることがありますが、ローズマリーや合成保存料に比較すると、抗酸化作用は弱いそうです。


 もうひとつ、忘れないでいただきたいのは、ペットフードのメーカーがフードを作る際だけでなく、フードの材料が作られる過程で合成保存料を添加していることがあるという事実です。ペットフードの原料は生の肉や穀類ではなく、粉末状になったものであることが多いそうです。その粉末を作る段階でも保存料を用いなければ、流通や保管に耐えることができません。


 「合成保存料無添加」と記載されたフードを与えているのに、ペットたちの身体に合成保存料が蓄積されていくことは大いにありうるのです。

 材料の段階での保存料に関しては、材料欄から判断できる場合もあります。「鶏脂肪(αトコフェロールにて保存)」というような記載がそれです。これは材料の鶏脂肪の酸化を防止するにあたって、ビタミンEの一種であるαトコフェロールで保存したという意味になるはずです(私見)。

 ただ、全てがラベルに記載されていることは少ないと考えてよいでしょうから、メーカーに問い合わせてみるとよいでしょう。そのメーカーの姿勢を確認する方法でもあります。また、たくさんの方がペットフードメーカーに材料のことや保存料のことを質問することが、ペットフードメーカーが新商品を開発する際の参考にされ得る可能性もあります。





人間と同じ食材を使っているフード
 一般的にキャットフードは、そのコストを下げるために、人間用としては使えない食材を使っているといいます。人間は食べない部分、人間の食材を作ったあとの絞りかす、何らかの理由で人間用には不適切とされた食材(病死した動物の肉など)等がペットフードに使われている、という指摘はよく見かけます(参考『ネコにてづくりごはん』『ペットを病気にしない』など)。


 そして、最近のフードのなかには「人間が食べられる食材を使用」と謳うフードも見かけるようになってきました。このような記載があるフードは、なんとなく気持ちがよいというか安心感がありますね。


 私は、「合成保存料を使っていなければ安全」と思っていた部分がありますが、危険なのは保存料だけではありません。人間用としては不適切な肉や、人間用の食べものの残りかすがペットフードに用いられていることも多々あるようです。そこには、保存料以外の有害な物質や含まれている可能性もあります。例えば、病気で死んだ動物の肉を消毒してペットフードにするような場合です。


 そこで、大手ペットフードメーカーの日本代理店数社に電話で原材料等について問い合わせてみました。A社は、「人間が食べられる部位(トサカとか足は含まない)が、材料として使っている肉は『ペット用』に区分けされたもので、人間が食べてはいけないとされるもの。病気で死んだような動物の肉は使っていない」ということでした。H社は、「人間が食べられる肉を使っている。ペットフードを社員が試食するが、人間が食べられない肉なら社員が試食はできないはずだ」とのことでした。





材料表示が明確なフード
 「副産物」「ミートミール」というような記載があるフードは避けたほうが無難だといいます。人間は食べられないような部分を使っていることもあるからです(参考『ネコにてづくりごはん』『ペットを病気にしない』など)。これらの用語に関しては、用語辞典もご覧下さい。





材料表示の最初に動物性たんぱく質が並んでいるフード
 猫は肉食動物ですから、良質な動物性たんぱく質の摂取が必要だということがよく言われます。そして、材料表示は、含まれている成分が多い順に記載されますから、材料表示の最初の3つほどが動物性たんぱく質であるフードが望ましいという考え方があります。


 ただし、ひとつの食材の成分をばらすことによって、含有量を少なくみせているという場合もあるようです。たとえば「とうもろこし粉」「コーングルテンミール」という表示は、どちらもとうもろこしに由来します。これらをあわせると動物性たんぱく質よりも量が増えるのに、分散させることによって、動物性たんぱく質のほうが含有量が多いように見せかけることも可能です。


 また、以前某大手フードメーカーのセミナーに参加したとき、動物性たんぱく質が少ないのでは? という質問をしたところ、必要な栄養素はきちんと計算して添加しているので問題ない、というお答えでした。ただし、合成されたミネラルやビタミンは体外に排出されてしまうので役に立たない、という指摘もあります(参考『食べてはいけない! ペットフード大解剖 愛犬編』)。


 材料表示欄の動物性たんぱく質については、私もどのように考えてよいのかよくわかりません。また、粗たんぱく質のパーセンテージは示されていても、動物性たんぱく質がどれくらい含まれているのかラベルからはわかりません(そのうち消化吸収できるたんぱく質がどれくらいあるかは全くわかりません)。私は数種類のフードをローテーションさせ、手作り食もあわせて与え、あとは気にしないようにしています。





正規輸入品
 良質といわれるキャットフードのほとんどが輸入品です。正規代理店を通じて輸入され、日本語のラベルも貼付してあるものが正規輸入品。並行輸入品は、個人輸入などで本国のメーカーから直接仕入れられ、日本語表示もないものがほとんどです。


 正規輸入品の場合は輸送の際の劣化や高温多湿という日本の気候を考えて、成分が調整してあったり、パッケージにも一工夫加えられていることが多いようです。何か問題が生じれば、代理店が調整してくれるはずです。


 並行輸入品はとても安いけれど、輸送の際のコンディションが悪い、輸送や日本での保管を考えたパッケージではないなど品質に問題がある場合があると考えられています。私も並行輸入品を購入したことがありますが、賞味期限の記載がなかったり、正規輸入品のパッケージは密封性に富んでいるのに並行輸入品は紙袋のパッケージだったりしました。


 並行輸入品を購入した場合は、賞味期限が記載してあったとしても、購入後1〜2ヶ月で使い切ることが無難でしょう。





広告にあまりお金をかけていないフード
 同じ値段のフードでも、TVや雑誌の宣伝をたくさん行っている場合は、広告費にお金がかかっているはずです。それならば、宣伝費用をおさえて原料にお金をかけている(であろう)メーカーのフードを選んだほうがよいだろう、という考えがあります。


 ただし、日本では宣伝を見なくても本国ではガンガン宣伝しているというケースもありますが……。





 フードの選び方・与え方等


1種類のフードにしぼらない
 これも数人の獣医さんや、ペットショップ経営者からの意見です。1種類だけ長く与え続けると、万一有害な物質が入っていた場合に危険が高くなります(「合成保存料無添加」と書かれたフードを与えていたところ、材料の精製過程で合成保存料が多量に使われていた、というような場合もあてはまりますね)。リスクを分散するという意味で、数種類のフードをローテーションすることを勧める専門家は多いようです。


 また、同じ食材を食べ続けると食物アレルギーを起こしやすくなるという指摘もあります。猫の食物アレルギーの68%が同じ食事を2年以上継続的に食べた結果であったとの報告もあるそうです(参考『改訂新版 ネコの病気百科』)鶏、七面鳥、合鴨、ラム、魚肉など異なるたんぱく質を用いたフードをローテーションしていくのもよいかもしれません。ドライフードと缶詰、市販フードと手作り食などの組み合わせもいいだろうと思います(私見)。


 ただし、いざ食物アレルギーを発症した場合、アレルゲンをつきとめるため「除去食試験」「誘発試験」を行いますが、たくさんの種類の食材を食べさせているとこのテストが大変だ、という指摘もあります。


 アレルギーに関しては、納豆菌や乳酸菌などの発酵食品をたくさんとることが予防につながるという指摘もあります(参考 TV番組『あるある大辞典』)。個人的には手作り食、生肉、発酵食品なども併用して、たくさんの食材を猫に食べさせることが大切ではないかという気がしています。食物アレルギーを発症したときのテストのことより、普段の食生活でアレルギーを予防するほうに重点をおきたいと思っています。





開封後1ヶ月で食べきれるサイズのものを選ぶ
 パッケージに工夫を凝らしたフードであっても、一度開封すれば酸化は進みます。特にビタミンCやEのみを保存料としたフードであれば、酸化の速度が速いことにご注意ください。密封容器に入れて冷暗所で保存したとしても、開封して一度酸素に触れたフードは1ヶ月内を賞味期限と考えるのが無難でしょう。





フードの与え方について
 1日2〜3回、時間を決めて与え、30分程度でお皿を下げてしまうという方法がお勧めのようです。ドライフードの置き餌は、下部尿路疾患の原因となるという指摘があります(参考『ペットのためのハーブ大百科』)


 他方、下部尿路疾患の防止のためには、食事の回数をこまめにわけたほうがよいという指摘もあります。そのほうが、尿がアルカリ性に傾くことを防止できるんだそうです(参考:アイムス社のセミナー)。


 また、子猫や妊婦・授乳猫は好きなときに食べたいだけ食べさせたほうがよい、とも言われています。


 そこで、1歳くらいまでは置き餌にして、1歳を過ぎた頃からは1日2〜3回にするとか、半日置き餌&半日絶食といった与え方がいいのかなあ、と思っていますが、下痢気味の子や肥満気味の子にはまた違った対処が必要だと感じています。





サプリメントについて
 市販フードだけを与えている場合、猫用総合サプリメントの添加はお勧めできません。市販フードは栄養バランスを考えて、すでにサプリメントが添加されていますので、栄養計算せずにさらにサプリメントを添加すると栄養バランスが崩れてしまいます。特に、脂溶性ビタミンのAやDは過剰摂取が病気につながることがあります。犬の場合はカルシウムの過剰摂取も病気につながることがあるようです。


 ただ、病気の予防や対策として単体のサプリメントを添加することは効果的な場合があると思います。心臓病の子にコエンザイムQ10、L-カルニチン、魚油(EPA,DHA)、ビタミンC、コレステロールの高い子にL-カルニチン、魚油、糖尿病の子に水溶性繊維etc。これらは猫の状態、体重にあわせて、必要なサプリメントの種類や量を調べ、かかりつけの獣医さんにも相談しながら試してみてくださいね。

参考 わんにゃんごはん
うさぎうまの部屋→ホリスティックケアのページには病気別にサプリメントの種類や与える量が掲載されています。いくつかの資料を参考にされていて、とても充実した内容です。


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